『みどり葉』2024年3月号

第38回卒業生御寄稿「日常に埋もれている輝きを求めて」

第38回卒業生

朝井 巧

 福井の地で地元放送局に勤務して32年、さまざまな仕事に携わらせてもらいました(いまは金沢で勤務しています。)あらためて振り返ってみますと、この「地元放送局」というスケール感が一番自分に合っていると感じています。

 世の中の仕事は様々な人に影響を与え(メリットを与え)ることによって成り立っていますが、その対象が全世界であったり(総合商社とか)日本全国であったりとか(大手メーカーとか)、するわけですが私の仕事の範囲は「福井=自分の生活範囲」。つまり、自分の家族とか、高志高校時代に片思いだった◎◎さんとかがメッセージの対象なわけです。ではどんなメッセージを届けるのか?私の中でそれは「平凡な日常こそ奇跡のような感動が隠されている」でした。そしてそれを探索して、発見して、形にすることが地域放送局の使命の一つだと思っています。

 せっかくこのような原稿を書かせていただく機会なので自分の携わった企画でそのような表現がうまくできたと(勝手に)思っているものを(恥ずかしながら)紹介させていただきます。

 まず、「10年後に届く、ママからの手紙」。この企画は今でも続いていると思いますが、10年後の我が子に向けてお母さんに(お父さんでもいいのですが)手紙を書いてもらい、10年後にお子さんに届ける、というものです。お子さんにとっては10年前のお母さんからある日突然手紙が届く、ということになります。2000年にスタートした企画なのでもう2万通近くのお母さんからの手紙を預かり、子供たちに届けたことになると思います。

 この企画のアイデアが出たのは私が実家に帰省した際に何気なく昔のアルバムを見ていたときです。その写真は30年近く前のもので2・3歳ぐらいの幼い私がまだ若かった母親にに手を引かれているという、よくある写真です。しかし私はその写真を見た時に強い感動を覚えました。それは私は母親の無限の愛情を受けていたのだ、そしてそのような愛情に包まれて今の私がいるのだ、という当たり前といえば当たり前の、しかし強烈な感動と驚きです。同時にこのような体験を他の人にも知ってほしい、伝えなければ、と思っててできたのが「10年後に届く~」です。同時に「大切なこと・大事なことは日常のなかに隠れされている。それを見つけ出して、世の中に出すことがマスコミ人の使命だ」という想いを強く持ちました。

 同じような想いで企画したのが毎週土曜の夕方に放送されている「なんだー?ワンダー!」という番組です(現在は直接たずさわっていません)。番組コンセプトは「大切なことは平凡な日常の中に隠されている」-視聴者のみなさんから寄せられる素朴な疑問(なんだー?)を調べ、明らかにすることで、一見平凡に見えるものの中に隠されている驚き(ワンダー!)に到達しようとしています。そして視聴者の皆さんにも「日常に隠れている驚き=ワンダー!」を少しでも感じてもらえたら、そして視聴者のみなさん自身でも「ワンダー!」を探索してもらえたらと思っています。また番組のディレクター陣には、「究極の『なんだー?』と『ワンダー!』は私たちを取り巻くこの平凡な世界がある、という単純な事実‐そのような感覚を常にもってこの番組をつくっていってほしい、と(私の送別会の時に)伝えています。

 改めて振り返ると地域放送局という自分の生活範囲のスケール感の中に身をおけたからこそ、このような思いに至れたのだと思っています。私自身今後も折に触れこの「日常に埋もれている輝き」を探索し、世の中に出していけたらと思っています。

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